2008年12月01日

業績悪化を理由とする内定取消

Q:現在、当社は、世界的な金融危機に伴う急激な株価下落や景気悪化の影響で、ここ数か月で急激に業績が悪化したため、来春就職予定の学生の内定を取り消すかどうかの検討をしています。

最近では、毎日のようにマスコミにも取り上げられている、非常に深刻な問題である内定取消ですので、学生とのトラブルが訴訟に発展してしまうことがあると聞きます。

そのような事態を避けるために、企業としてはどのように進めていけばよいのでしょうか?

初めての方はこちらをクリック→ブログランキングへ


少し話が飛びますが、あなたの会社の安全衛生管理体制は、本当に大丈夫ですか?
自信がない方はこれを見ればすぐに解決。「3分で簡単にわかる!安全衛生管理体制」販売中!残り少なくなってきました。
話を戻します。


(1)内定の法的性質

採用内定取消については、労働基準法での規制は特にありません。だからこそ、企業の対応が非常に難しいともいえます。実務については、内容内定取消について争われた裁判例を参考にするしかありません。

そこで、内定取消について争われた裁判例をみると、最高裁判所は、大日本印刷事件(最高裁第二小法廷判決昭54.7.20)で、内定の法的性質について、次のように判断しています。

まず、会社からの募集に対して、学生等の応募者がこれに応募したことは、労働契約の申込にあたります。

そして、会社が応募者に「採用内定通知」等を発した場合は、応募者がこれに応じる旨の「誓約書」を提出したことと併せて、入社日を「採用内定通知」に記載された時期とし、「誓約書」に記載された採用内定取消事由が発生したときは当該契約を解約できるとの解約権が保留された労働契約が成立していると考えられる、としています。

したがって、実際には就労を開始していない学生であっても、既に労働契約が成立しているということを念頭に置いた対応が必要になります。


(2)内定取消の有効性

同判決では、内定取消は、一般的に「客観的にみて、内定を取り消してもやむを得ない事情がある場合」にのみ許され、単なる業績悪化だけを理由として簡単に認められるものではないとされています。

さらに、この解約権については、内定の当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる、としています。


(3)「整理解雇の4要素」との関係

経営悪化を理由とする採用内定取消の場合については、次の「整理解雇の4要素」の考え方に沿った判断を下した裁判例(インフォミックス事件 東京地裁判決9.10.31)があり、実務上は参考になります。

・人員削減の必要性
・採用内定取消の回避の努力
・人選の合理性
・手続きの相当性

この裁判例では、手続面において十分な説明が欠けていたとして、採用内定の取消が無効と判断されています。したがって、採用内定を取り消すべきかどうかは、上記の4要素の考え方に沿って慎重に考える必要があります。


(4)内定取消の実務(参考)

内定取消を行う上での考慮すべき事項について、次の点をあげておきますので、実務の参考にして下さい。

●内定取消をする必要がどの程度あるのか。
ただ単に前年より多少業績が悪くなった程度では内定取消はしないほうが無難。

●内定取消を行う前に、取消を回避するための企業内の努力をどれほど行ったか。
時間外労働の規制、中途採用の停止、役員報酬の見直し、賃金の見直し、パートや従業員の希望退職者の募集、内定者の職種変更の打診、その他経費節減等の経営努力など。

●内定取消を行う場合に、対象者をどうするか。
全員を取り消すか、一部のみ取り消すか。
一部の場合はどのような基準で選ぶのか。
その基準は合理的か、恣意的になっていないか。

●内定取消を行う時期はどうか。
遅過ぎないか。
やるならやるで早い方がよいという考え方もある。
遅くなればなるほどトラブルに発展しやすい。

●取消対象者への説明をどの程度実施したか。
対象者の理解を得られるように説明義務を果たしたか。
対象者への説明会は実施したか。
労働組合がある場合は団体交渉を行ったか。
説明を受けたという書面を作成したか。
納得したという同意書にサインをもらったか。

●取消後に、対象者に対して就職支援をどの程度行ったか。
できれば就職の斡旋などの支援を行うことが望ましい。

●内定取消は労働契約の一方的な解除であるから、解雇に準ずる措置と考えられるので、解雇予告手当に相当する補償金等を支給することが望ましい。

●内定取消にあたっては、会社として誠実な対応をすることが一番重要である。

以上は、あくまで一般論ですので、実際に内定取消を検討している場合は、実施する前に専門家に相談することをおすすめします。


ひとりでも多くの方にこの「労働法ブログ」を読んでいただきたいので、ぜひ応援して下さい。あなたのワンクリックがこのブログを更新させるための「力」となります。こちらをクリック→ブログランキングへ

もっと詳しい情報は、それぞれのサイトへ!
労働基準法のポイント
労働契約法のポイント
安全衛生管理体制のポイント
就業規則サポートセンター
労働者派遣法のポイント
健康診断のポイント
育児休業のポイント
労働保険年度更新のポイント
年次有給休暇のポイント


Posted by 労働法ブログ at 15:46 │Comments(1)TrackBack(0)


▼コメントやトラックバックについて▼
この「労働法ブログ」についてのご意見などはコメントへ。また、個別のご質問やご相談はこちらへどうぞ(無料です)。トラックバックはご自由にどうぞ。ただし、記事の内容に全く関係のない場合は、スパムと判断し、削除する場合があります。ご了承下さい。


この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/tetuyaf/51409113
この記事へのコメント
ついに自分でクリックを始めましたね。新年の始動ですね。一か月以上ブログを書いていないのに、不自然ですからね。
Posted by 自分でクリックするな! at 2009年01月07日 00:31
 


▼免責事項▼
この「労働法ブログ」で提供している情報の内容には管理人の意見が色濃く反映されています。また、記載日時点での法律に基づいて記載しておりますので、法律改正等に伴い制度が変更されている場合があります。したがって、その内容を保証するものではありません。万一この情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切責任を負いません。

▼このブログのリンクについて▼
この「労働法ブログ」はリンクフリーですので、お好きなページをリンクして頂いて構いません。